イベント・研究会

医工学研究会

医工学研究会

第22回
日時:2011年6月17日(金) 18:00 -
場所:千葉大学医学部附属病院第一講義室(外来棟3階)

吉岡 亨
高雄医学大学

ゲストコメンテーター

千葉大学バイオメディカル研究センター 幡野雅彦教授、他

タイトル

ハダカデバネズミ(Naked Mole Rat)に学ぶ健康長寿工学の構築

概要

ハダカデバネズミは実験動物としては馴染みが少ないが、
最近通常のネズミより14倍もの長寿を示すことで注目を集めている。
この動物はcancerになりにくいslow aging animalとして知られているが、
その理由として、Buffenstein研究室の最近の研究成果によれば、
ハダカデバネズミのタンパク質にはcystein残基が多く、
これが酸化ストレスに対する抵抗性を示す原因であろうと考えられている。
さらに、皮下の神経末端では、痛みのシグナルを運ぶとされている、
substance Pを持たないことがわかっており、
このことがさらなるストレスの軽減に役立っていると考えられる。
現在のところ、この動物の健康長寿の原因は、その体内の機能性タンパク質が、
活性酸素に対する高い抵抗性を持つことが理由として挙げられよう。

これまでの知見によれば、活性酸素(ROS)はミトコンドリアにおけるATP産生時に
体内で作られているのであるが、その他に外部から与えられる放射線・太陽光線・熱などの
刺激によっても活性酸素が体内に相当量作られていることが知られている。
活性酸素に対する抵抗性が生まれてくるメカニズムは、まだわかっていないが、
おそらくは、Hsp70のようなheat-shock proteinの生成と同じ様な保護機構が
関与していると考えている。
そこで本講演では放射線や太陽光線によるROSの産生機序、ROSの化学的な消去法、
ROSによる細胞ダメージに対する補償法、
そして、ROS resistant protein の効率的な生成法について考察する。