Workshop
「Slow-aging工学の展開」

講演概要

マイクロ波エネルギーによる温熱治療

齊藤一幸,伊藤公一

マイクロ波組織内加温法は侵襲的手技であるものの,患部のみを確実に加温可能な方法である.我々はこれまでに,マイクロ波組織内加温用微細径アンテナとして,同軸スロットアンテナの研究を行い,その臨床使用も経験した.それに至る過程においては,まず,コンピュータシミュレーションによって,アンテナ構造パラメータの最適化とアンテナ周辺の加温分布の推定・評価を行った.その後,複数例の臨床使用を通して,本アンテナを用いた治療の有効性を確認した.なお,同軸スロットアンテナを用いるマイクロ波組織内加温法は,アンテナ周辺部のみの局所加温が可能であるため,患部が神経や太い血管に隣接しているような場合でも,適切な治療を行うことが可能であった.また,治療対象が大きい場合は,同軸スロットアンテナを同時に複数用いてアレーアプリケータを構成することで,加温領域の拡大も実現できた. さらに我々は,同軸スロットアンテナの構造を柔らかく,かつ,長くすることで,これを腔内加温へ応用するための検討を続けている.試作したアンテナは,直径が2 mm程度であるため,内視鏡の鉗子孔に挿入することが可能である.そこで,治療対象は胆管部腫瘍とし,治療を実現するための検討を続けてきた.これまでに,ブタ胆管に試作したアンテナを挿入し加温する実験を行い,血流が存在する生体組織でも,確実に加温が可能であることを確認した.今後は,臨床使用が可能なアンテナを開発する予定である.