Workshop
「Slow-aging工学の展開」

講演概要

SOD遺伝子改変マウスを用いた酸化ストレス研究

清水 孝彦

酸化と抗酸化のバランス破綻は酸化ストレス状態を惹起し、様々な生体成分を酸化傷害する。その結果、細胞や臓器が機能不全となり加齢性疾患の要因になると考えられている。本研究では主要な抗酸化酵素SODに着目し、遺伝子欠損マウスを用いることで、酸化-抗酸化バランスを人為的に破綻させたマウスの表現型を解析し、細胞内活性酸素種(特にスーパーオキシド)の生理学的役割を解析する。細胞内には局在の異なる2つのSOD(CuZn-SODとMn-SOD)がそれぞれ細胞質とミトコンドリアに発現している。CuZn-SOD欠損マウスは致死性の重篤な病態は示さないが、加齢黄斑変性症、皮膚萎縮、骨格筋萎縮など様々な組織で老化様変化を示す。本ワークショップでは、さらに本欠損マウスが低代謝回転型骨粗鬆症を呈すること、脳ではAオリゴマー形成が亢進し、アルツハイマー病様病態を早期に発症することを紹介する。一方、Mn-SOD欠損マウスは致死性な代謝異常により新生児期に死亡する。成体でのMn-SODの役割を明らかにするために、組織特異的なMn-SOD欠損マウスの作製を行った。特に心臓では致死性の拡張型心筋症を呈することが明らかになった。これらの欠損マウスに抗酸化剤ビタミンCやSOD/カタラーゼ模倣物を投与すると顕著な病態改善が認められたことから、細胞内活性酸素による酸化傷害と病態発症に強い関わりがあることが明らかとなった。