低侵襲腰仙椎前方固定術支援を目的とした内視鏡下総腸骨静脈セグメンテーションモデルおよび物体検出モデルの開発と評価
腰仙椎前方固定(以下, OLIF51)とは, 第55腰椎と仙椎(以下, それぞれL5, S1とする)の脊椎固定を低侵襲に行う術式であり, 右側臥位としてで. 以下の図のように小視野でL5/S1椎間板前方を露出して, L5, S1間の椎間板を固定する術式を指す. OLIF51のアプローチにおいては, 解剖学的に総腸骨静脈が不可避的である. 以下に術野近傍を走行し, 操作による損傷リスクが懸念されるため, 解剖学的に特に重要である. そこで本研究室では, 総腸骨静脈を内視鏡画像から検出を行うモデル開発に従事している. 現在, 画像および動画でのモデル評価を中心としている.
外反母趾の非侵襲的スクリーニングを目指したモデルとアプリの開発
従来用いられるX線写真は侵襲的でコストがかかるため、外反母趾のスクリーニングは一般的に行われない。本研究は非侵襲的なスクリーニングを目的として深層学習ベースの画像処理により外観写真から外反母趾角を推定するモデルを開発し、モデルを搭載したアプリを開発した。アプリは足部外観写真の撮影機能、外反母趾角の推論、記録の保存などの機能を持つ。
外反母趾患者の外観写真における単純X線パラメータの自動計測システムの開発
深層学習を用いた外反母趾の外観写真からの単純X線パラメータの推定 外反母趾は, 一般の整形外科診療で散見される足部疾患の一つであり, しばしば足の痛みを伴う. 外反母趾の評価は足部単純X線を用いたHV角の計測が一般的であるが, 単純X線にはコストや放射線被曝の問題がある. そこで, 深層学習を用いて足部外観写真から外反母趾の単純X線パラメータであるHV角, M1-M2角, M1-M5角の推定を行った. 今後, 放射線被曝なく外反母趾のスクリーニングや疫学研究に本システムが利用できる可能性がある.
腰部脊柱管狭窄患者における超音波診断装置を用いた硬膜管拍動の基礎的研究
現代の超高齢社会において,脊髄疾患症例数は増加している.これらの疾患では加齢に伴う脊椎の変性などが要因で手足のしびれや痛み,筋力低下,歩行障害などの神経症状を引き起こし,日常生活動作(ADL: Activities of daily living)の低下や生活の質(QOL: Quality of Life)の著しい悪化をもたらす疾患として注目されている.脊柱管内を走る硬膜管は心拍に合わせて拍動することが知られているが,その詳細な特性や機序は未解明である.健常者において,硬膜管は心拍の他に呼吸の特徴を持つが,脊柱管狭窄症患者では心拍的特徴が得られないことがMRI Time-slip法を用いた先行研究で指摘されている.また,本研究室の先行研究において健常者において,超音波を用いて硬膜管の拍動の観察を行った.本研究では,硬膜管の拍動をリアルタイムかつ低侵襲で計測するため,超音波診断検査装置を導入し,硬膜管の拍動と心拍,呼吸流量と呼吸運動との比較解析を行った.腰部脊柱管狭窄疾患患者22名を対象に,高位腰椎(L4/5, L3/4, L2/3)の計3高位から各2回ずつ硬膜管の拍動を超音波診断装置で撮影し,同時に多チャンネル生体信号計測装置であるBIOPACを用いて心電図,呼吸運動,呼吸流量を計測した.解析にはSAD-KLT-IPI法によるスペックルトラッキングを用い,STL分解を通じてスペクトル解析および自己相関関数,Grangerの因果推定を行った.
その結果,呼吸周期に関連する硬膜管の拍動は季節成分として分離可能であり,呼吸運動や呼吸流量とのスペクトル解析で一致するピークが確認された.一方,心拍周期における硬膜管の拍動は一致するスペクトルピークを示さなかった.呼吸などの体動は脊柱管狭窄と無関係に存在することが示唆された一方,心拍による硬膜管の動態は狭窄によりバルクフロー的動態が阻害されている可能性が示唆された.また,硬膜管の拍動には1/fゆらぎが認められ,多くの周期的変動を持つ特性が示唆された.
本研究は,低侵襲かつリアルタイム性に優れた超音波診断技術を用いることで,脊椎疾患の病態理解や治療法の開発に重要な示唆を与えるものである.今後は,一椎間狭窄症例や年齢に伴う生理的変化を含むさらなる研究が必要であり,これにより診断技術の汎用性向上および脊椎疾患診断の標準化が期待される.
深層学習を用いた頚部脊髄症患者MRIの脊髄セグメンテーション手法の確立と臨床症状との関連
頚部脊髄症は, 脊髄が外的な圧迫を受けることで機能障害を生じる疾患です. 頚部脊髄症患者の脊髄は圧迫により変形しているため, MRIを用いた半自動的な関心領域の設定が困難とされています. 本研究では, 変形のある脊髄に対して自動的な関心領域の設定が行えるよう, 深層学習を用いて脊髄のセグメンテーションを行います.